強い女メーカー騒動を考える

 強い女メーカー|Picrew関連の騒動が大変興味深く,考察をしてみる.矛盾やおかしい点は指摘がほしい.

 

騒動について 

まず,一連の騒動はTwitter: @agt87_氏による,画像作成webサービス強い女メーカー|Picrew)から始まる.

そのwebサービスは,利用するユーザーが任意にパーツを選択し,1枚の画像を作り上げるものであり,商用利用は不可である,と記載されている.(2019/02/21)

 本騒動は,そのwebサービスによって作られた画像が不当に利用されているとして,製作者が弁護士を通して主張している,といったものであるようだ.「不当に利用する」の範囲に,「アフィリエイトサイトで紹介された」が含まれているらしく(不確定)そこで騒動となったと考えられる.

情報の真偽は不明だが,以下に「訴えられた」内容がある.

強い女メーカーをスクショで紹介したら @agt87_ さんから損害賠償50万円で訴えられた話。 - yowai-otokoのブログ

アフィリエイトサイトで引用を行っただけ,で「訴えられた」といった内容になる.上のブログの記載が正しいか否かは知らないため,この騒動を自分なりにルールに則って解釈を行う.

ここでの「正しい」ルールとして,以下の4つを挙げる.

  • 強い女メーカーdescription

  強い女メーカー|Picrew

  Picrew 利用規約 – Picrewサポート

  著作権法 - Wikipedia

  消費者契約法 - Wikipedia

強い女メーカーdescription

少なくとも,商用利用が禁止の旨は比較的当初から記載されていると考える.また,連絡なしでの商用利用には使用料を求める旨も明記されていた.

以下でピクルー規約に触れるが,ユーザーはその利用可能範囲を承諾する必要があり,商用利用禁止というルールは妥当性がある.ここで問題になるのが,「商用利用」の範囲である.少なくとも法律で商用利用の定義はなされていない.商用利用に関する裁判事例を挙げたいのだが,知る限り,また調べる限りにない.しかし,商用の判断が不明な場合はコンタクトをとることを要請しており,ひとまず本件における「商用」範囲は製作者の定めるところと考える.

製作者と,webサービスを利用するユーザー間に結ばれた契約の一つとして「商用利用禁止」であったのならば話が早い(ユーザーの契約違反)のだが,本件はピクルーの利用規約に沿って話が進む.

ピクルー利用規約

 この規約は,ピクルー(株式会社テトラクローマ)とクリエイター(画像メーカーなどの製作者),またピクルーと利用ユーザー(画像メーカーなどの利用者)間の利用契約と考えることができる.

第8条において,クリエイターは利用可能範囲を設定せよと明記されている.

また,第9条3項においてユーザーは利用可能範囲の順守が求められている.

ユーザーは、本件画像を、第8条第2項でクリエイター及び当社が設定する「本件利用可能範囲」でのみ使用することができます。

すなわち,ここまでの「ルール」に従うと,

  • 「商用利用」と製作者が判断した使い方はピクルー利用規約に反している
  • 連絡なしでの商用利用には使用料が請求される

と考えられる.

余談だが,「訴えられた」ブログにおいて 「訴えた」通知はピクルーの利用規約第8条2項を参照している.

クリエイターは、本件素材の提供の際に、本件素材及び本件画像について、クリエイター用サイトに列挙された利用可能範囲を選択し設定するものとします。ただし、当社が、本件素材及び本件画像につき、別途定めた利用可能範囲については、クリエイターは、その設定を承諾するものとします(以下、上記のクリエイター及び当社が設定した利用可能範囲を「本件利用可能範囲」といいます。)。

 この規約はクリエイター(製作者)への規約である.

これに違反があるのならば締め出されるのは製作者になってしまう.大変だ.

 

 著作権法

 32条に引用についての記述がある.

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

条文だけ読むと解釈方法が無限大に思えるが,多くの裁判例があるためそこそこ絞られていく.著作権フリーの写真だと思って使用したら20万円の損害賠償になった実例 | STORIA法律事務所のように,損害賠償までになった裁判も当然存在している.

アフィリエイトサイト」が商用利用か否か,これは「ルール」に照らすと商用利用と言える(製作者判断が可能なため).しかし,アフィリエイトサイトの多くが「引用」の域を出ないように思う.引用についての記事は以下がわかりやすい.

正しい「引用」の定義とは?著作権法第32条の基礎知識 | なんでものびるWEB

 

 以上から

  • 「引用」の域を出ない場合は著作権上,問題のない可能性が高い.

 と考えられる.

本件に関わらず引用の域を出ているアフィリエイトサイトはいつ法的措置を取られても仕方ないことを理解していただきたい.

消費者契約法

本件では,使用料としてそこそこの金額を請求している.妥当か否かを私に判断することはできないが,消費者契約法の第9条1項が議論に挙がると考えられる.

第九条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
  • 金額に妥当性を求めることは法的に正しい

といったまとめで逃げることとする.裁判例が増えれば議論になるのですが…

ルールのまとめ

  • 「商用利用」と製作者が判断した使い方はピクルー利用規約に反している.
  • 連絡なしでの商用利用には使用料が請求される.
  • 「引用」の域を出ない場合は著作権上,問題のない可能性が高い.

まず,商用利用の定義は不明故に製作者に依存すると考えられます.サービス使用者と製作者の間で,サービス利用のタイミングで契約がなされたと考えると,使用料の請求には妥当性が存在します.著作権に関してはケースによりますが,主題として訴えられるのかは不明です.

 

以下,主観です.

 

  • webサービス使用時に,製作者と利用者に契約は結ばれるのでしょうか?

ここまで,4つのルールが正しいとして考察しました.ピクルー利用規約に認められた製作者の権利の中には,少なくとも契約が結ばれるなどはありません.しかし,作品に明記されているものではあります.論点の帰着が全く見当違いの場所にある気もしますが,裁判例知っている方いらっしゃいましたら教えてください.

  • あのブログの内容が本当だとしたら

通知の内容に無茶があるような気がしています.また,訴えられたことを守秘する義務は発生しないと思いますが,被訴訟者にプライバシーを守るため公開するなとは一体…弁護士側の動きに不明瞭な点が多く思いました.